【小説】都市伝説 幸せ天国計画(下)

~4~

 篠原菫が描いた漫画、「幸せ天国計画」はツイッターでバズり書籍化の話も出た。

 有名な都市伝説「死を予言する女の子」をモチーフにしたのも人気のひとつだが、作者である篠原菫は不振な事故で死んだという噂が流れたのも要因となった。

 篠原菫はリンデに殺された。

 それがネットの総意だが、小林は首をひねる。何故なら隣には殺されたはずの篠原菫本人が大あくびをしながらゲームをしているからだ。

「菫さん、僕をこんな気持ち悪い人間にしないでくださいよ」

「そう? いつもと変わらないけど」

素っ気ない返事に小林は口をつぐむ。どう考えても似ていない。共通点は職業とオカルトマニアぐらいじゃないか。

小林と篠原は、篠原が死を予言する女の子の取材中に出会い、今は半年ほど交際している。

 篠原は小林には知り得ない情報も知っていた。いったいどこで仕入れたのか、教えてくれなかった。

「――それで、この漫画のどこまでが真実なんですか?」

「秘密」

「教えて下さいよ、今すごく気になっているんですから。それに菫さんが死んだことにする必要もなかったのに、どうして」

 早口で捲し立てたら菫はゲームから手を離した。ようやく答えてくれる気になったらしい。

「誰にも言わない?」

 小林は頷いた。

 篠原は真面目な表情で言った。

「――私は都市伝説になりたかったの」

意味不明な答えに困惑していると篠原は楽しそうに笑った。

「あとは私が死んだ時に、リンデの幸せな天国で教えてあげる」

 小林はまた篠原のことを掴めないでいた。だが小林はつかみ所の無い篠原を好きになってしまったのだから仕方がない。

そんな姿を篠原は満足そうに眺めていた。

 篠原菫はリンデと公園で再会し、ある条件と引きかえに取材を持ちかけた。

 リンデはそれを快諾した。

内緒話をするように、リンデは菫に耳打ちした。リンデは菫にだけ、真実を話した。

 鈴原楓は生まれたときから特異な人間だったせいで周囲に疎まれ迫害された。

 ひどい環境で育った為、物心ついた時から精神は分裂し、鈴原楓は二重人格になっていた。

楓とリンデは同一人物。楓への悪意がリンデを化け物にしたのだ。

 リンデは迫害されている楓を哀れみ、幸せな天国を与える為にこの世から善良な人間を幸せな天国へ連れて行く。

 これがリンデの「幸せ天国計画」なのだと、言っていた。

篠原菫はリンデから聞いた、共同墓地にある鈴原楓の墓前に手を合わせた。

「――こんなお伽噺にしたのだけれどどうかしら?」

 菫は知っている。今日もどこかでリンデは楓の為に幸せな天国を作っていると。

 肉体が死ぬ前に、リンデに魂を託す約束をした。

時期を見て幸せ天国計画の真相を書き綴り、小林に託す。

 そして私はリンデや鈴原楓と共にインターネットの海で永遠に揺蕩う存在になるのだ。           

 やけに遥々としている秋空にほくそ笑んだ。

 私は都市伝説になる。

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