記憶の匂い


片付けをしていると写真がたくさん出てきた。そう言えば祖父はいつも私たち孫の写真を撮ってくれていたのを思い出した。 父と母の結婚式の写真もあった。父は何故かちょっと悪そうな決め顔をしている写真が何枚もあって、なんだか面白くて笑ってしまった。父が生きていたら何故その決め顔だったのか聞いてみたい。


若い時の祖父と祖母の写真もあった。
髪が黒い祖父は新鮮だったし、祖母の笑顔は私が知っているのと同じだった。 祖父は私の事を忘れてしまっていた。悲しかったけど、仕方ないと思った。


認知症に記憶が蝕まれていく事を想像すると、私はとても怖い。積み重ねてきた記憶、人生の記録が脳から抜け落ちていく。
大事なものも忘れていく。こんな怖いことがあるのだろうか。
祖父の入院する日、一緒に病院に行った。
病院特有の、消毒液のような匂いがする。
祖父の家であったこと、祖母と父の事も、家族の思い出も私は忘れない。
開け放った窓から吹き込む強くて新鮮な風に匂いを消されても、私はずっと憶えていたいと思った。

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