恋が彼等を連れ去った

彼女には独特の世界観があった。美しいもの、綺麗なものが好きで当時流行っていたビジュアル系の音楽を好んで聴いていて、男装をしていた。

「バンギャじゃないけれど、バンギャだって勘違いされる」

彼女はそう言ってた。

彼女は不安定で気だるげでどこか弱弱しくて、渋谷と地元が好きだった。学校では「イケメン」と囃し立てられていた。私と彼女は名前が同じで、「NANAみたいだね」なんて言って笑いあった。それくらいしか共通点はなかった。

彼女とは教室で本を読んでいたら仲良くなった。彼女曰く、本に詳しい友達が欲しかったらしい。幸運なことに女性ばかりの専門学校で本を読んでいたのは私くらいだった。

「本を一緒に選んでよ」

たしかそんな風に誘われて渋谷のBOOKOFFに行った。何を買ったかなんて憶えていない。憶えているのは初めて行った渋谷の人の多さと沢山のビルたち。 多くの人種が犇めいていた。 居酒屋やバーが連なり、喧しく光る電光掲示板が眩しくて。私の思い描いていた東京の街そのものだった。

彼女は迷うことなく歩き出す。私は田舎者丸出しで、キョロキョロ周りを見ながら彼女に着いていった。

私はどちらかというと人と仲良くなるのに時間がかかり、なかなか心を開けないタイプだった。それなのに彼女は私の心にあまりに自然に入ってきた。

打ち解けるのも友情が恋愛感情に変わるのも、時間はあまりかからなかったと思う。

当時の私は適当で無頓着で、愛情と友情の違いも同性愛などにも深く考えたことがなかった。ただ、父が突然亡くなってしまったトラウマで生み出された「好きな人は明日死ぬかもしれないから想いはすぐ伝えないといけない」という論理を掲げて日々を過ごしていた。

珈琲を飲む姿があまりにカッコよくて、ぼんやり眺めていた時に「これが恋か」と違和感もなく腑に落ちたのだ。

告白は私からした。

ブログランキング参加中

クリックして応援して頂けると喜びます(*'ω'*)

にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
にほんブログ村
人気ブログランキング

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です