深海

人の数だけ運命があるならば、私と深海の出会いは一瞬だけ交差した運命の奇跡ではないだろうか。

夢見がちな想像で誰かに話したら呆れられてしまうだろう。

同性愛に偏見はないが恋にしてはあまりに無様で惨めだ。

愛にしては悪意が強すぎる。

憎しみを覚えながらも抱きしめたくもなる。

抱きしめたいのに、何で死ななかったのかと憤りも憶える。

偶然SNSで見つけただけなのに、私は深海への感情に名前をつけられないでいた。

気持ちが悪い。

赤の他人にここまで執着してしる自分自身が気持ち悪い。

死にぞこないの深海の居場所を探す為に出来る限り情報を集めた。良くも悪くも目立つ深海の居所を探すのは容易だった。

ネットリテラシーの低い深海を見下し、病院の前に着けば笑みがもれた。

インターネットに情報を漏洩させ深海がバカで本当に可哀想。

深海浅はかな自己顕示欲の為に、私に全てを暴かれる。想像しただけで興奮した。

大罪人の処刑を行う死刑執行人のような厳かな気持ちで足音を響かせる。

医師や看護師を欺き、素知らぬ顔で深海の病室へ向かう。深海が個室に入院していたのも運が良かった。

まるで神様まで私の味方をしてくれているようだ。

私は深海との関係を断ち切りたい。

私は私ひとりで完璧になり生きていきたい。

深海と出会った間違いを訂正したい。

気持ち悪いままでは生きられない。

病室の前にあるネームプレートを、間違っていないか何度も確認した。

「からさわ、うみ……」

小さな声でゆっくり呟いた。深海の本名を改めて目の当たりにした瞬間、何か冷たいものが背中を走った。

この扉の先にいるのは紛れもなく「深海」だ。唐沢海ではない、インターネット上で私を魅了し惑わせた魔女だ。

魔女は狩らないといけない。殺さなきゃ。

異分子は淘汰されるのがこの世界の理だと歴史が証明している。

意を決して扉を開いた。

部屋の中には風に揺れる白いカーテンと、白い病室で白い服をきた作り物のような傷ひとつ無い「完璧」な深海が寝ていた。

柔らかい日差しが差し込む。

正方形以外の世界でも深海は神々しかった。

深海、深い海とかいてフカミ。

深海の瞼が微かに動いた。

その瞬間、淘汰されるのは私だと気付いてしまった。

異分子は私だ。魔女は私だ。

普通に考えて、ストーカー染みた行為をして、死んで欲しかったなんて考える方がおかしい。

私が死ぬべきだ。死にたい。消えないといけない。

悲しくて辛くい。何も思い通りにいかない。

生きていくことが辛い。

深海を殺して骨の髄まで狂人でいられればまだ、楽に呼吸が出来たのだろうか。 

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